生活スタイルを変えるには時間と労力が必要だが、カロリスも例外ではない。しかしながら、カロリスによる健康上のメリットは、確かに骨を折るだけの価値がある。

 とはいうものの、誰しもが魔法の特効薬を一度ならず夢見るだろう。加齢を抑制し、がん、心臓病、糖尿病を予防し、記憶力を増進し、長寿を実現する錠剤が安全で効果が高いものなら、それさえ飲めば、もう煩わしいカロリー計算をしなくてもすむからである。

 ハーバード大学のデビッド・シンクレアらは、レスベラトロールという植物性の物質がカロリスと同様の効果をもたらすことを発見した。そこで、このレスベラトロールこそが上記の特効薬かもしれないと考えられている。カロリスにより低容量のストレス=ホルミーシスが誘発され、SIRT1が活性化されるのと同じように、レスベラトロールはこのホルミーシスを創りだすことによってSIRT1を活性化させるのである。

 過去数年来、研究者たちはカロリスの模倣薬、つまり、カロリー制限しなくても、カロリスの健康と長寿の恩恵にはあずかれる薬が現れるであろうといいつづけてきた。そしてついに、その待望のカロリス模倣薬として、レスベラトロールが踊りでてきたというわけだ。レスベロトロールの薬効で最も重要な点は、この薬がカロリスと全く同じ長寿遺伝子を活性化させ、しかも、その遺伝子がカロリスにおける場合と同じように働くという点にある。

 メトフォルミンは糖尿病の薬だが、カロリス模倣薬としても試され一定の長寿効果がある。ただし、その効果の大半は、血糖降下作用によるものであり、これは通常のカロリスで起こる変化となんらかわりが無い。

 レスベラトロールの場合は、驚くべきことに、単にカロリスの効果を模倣するだけではなく、高カロリー食の欠点を打ち消す効果ももっているのだ。シンクレア博士の教室と国立加齢研究所の研究によると、脂質60%の食餌を与えられたマウスは体重が増え、糖尿病となり、早死するが、同じ餌にレスベラトロールを加えた場合は、体重増はあっても、血糖やインシュリン値はあがらず糖尿病とならない。

 しかも、レスベラトロール入りのエサを与えられたマウスは運動機能が増進する。この点はカロリスで認知能力が向上する事実と見事に一致している。

 ハーバード大学の成果は世界的反響を巻き起こした。各所で同様の実験が追試され、レスベラトロールのサプリメントの売上げが急増したのである。以下に示すような有効性が証明されている。

  1. 心血管系の健康:血栓を防ぎ、動脈硬化を予防する。また、心臓の加齢を起こす炎症反応を抑制する。
  2. がん:乳がん、前立腺がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、甲状腺がんの細胞系増殖を抑制する。動物実験では食道がん、小腸がん、乳がんを抑制することが示されている。
  3. 糖尿病:Sirtris製薬の最初の臨床治験はSRT501である。これは改良版のレスベラトロールで、インシュリン分泌を改善し、血糖コントロールをよくする。カロリスの要諦である血糖コントロールに対して明らかな効能があるということの証左といえる。

 こんなに効果があるなら、健康になりたい人は赤ワインをのんだり、レスベラトロール入りの食事を食べたりしたら良いと思うかもしれない。しかし、そうした飲料や食物のレスベラトロール含有量は微量であり、食べ物から充分な量のレスベラトロールを摂取する見込みは殆どない。赤ワイン、ぶどう、ラズベリー、ピーナッツその他諸々の植物には少量のレスベラトロールが含まれてはいるが、動物実験と変わらないほどの量を摂取するためには、ありえないほどの量を飲んだり食べたりしなくてはならないのである。

 食物に含まれているレスベラトロールの量は、研究に用いられたものとは程遠いものである。体重過多のマウスの寿命を伸ばしたハーバード大学の実験では、1kgあたり22.4mgのレスベラトロールを使用している。これは160ポンド(72.5kg)の男性の場合、1,575mgもの量に相当する。

 ワインや食事でレスベラトロールを摂るのが難しいなら、サプリメントはどうだろうか?魅力的な提案ではないだろうか?

 レスベラトロールをとるべきかどうかについては、以下の情報を参考にして各人が決めてもらいたい。レスベラトロールとそのサプリメントについて、客観的に判断する一助となるだろう。

基本情報

 大抵のレスベラトロールサプリメントはイタドリ(学名Polygonum cuspidatum)という潅木から抽出されている。環境保護局によってレスベラトロールは無害であると認められているが、妊婦や子供は摂らないほうがよい。レスベラトロールにはトランス型(活性型)とシス型(非活型)があり、活性型のみがSIRT1を活性化させる。また、光に曝露するとトランス型はシス型に変化してしまうため、製造工程や保存過程においては光、温度、酸素をさけなくてはならない。

 レスベラトロールの効能を活かすポイントは、活性型を供給する信頼できる業者を見つけることだ。サプリメントは薬品のように規制されているわけではないので、中には全く効き目が無いものを売る業者がある。血糖測定器を使えば、自分で食後血糖値を測定してレスベラトロールの生物活性を調べることができる。あきらかに血糖値が下がっているなら、すくなくともなんらかの効き目はあるということになる。

 もう一つ考慮しなくてはならないのは摂取量である。適正な摂取量についてはわかっていない。1カプセルに20mg含有という製品もあれば、100mg含有のものもあるので、ラベルはちゃんと読まなくてはならない。

 また、カロリス実践者は食べる量が少ない分、どんな薬品でも効き目が出やすいということを覚えておく必要がある。一流製薬会社勤務で、自らもカロリスを実践している専門家のアドバイスは「少量から始めていくこと」である。最も大切なことは、自分の体の状態とよく観察することだ。疲労感が強いなどの変調を感じるならばとりすぎの可能性がある。そのような場合には、量を減らして、はじめからやり直した方が良いだろう。

 本書の第8章の効果判定表を新しいサプリメントや生活スタイルを試す場合に利用していただきたい。それらの指標は、カロリスプログラムがどの程度、抗加齢に役立っているかを判断する材料となる。レスベラトロールであれ他のサプリメントであれ、摂取すればこれらの指標値が改善されるべきである。

肝機能検査を定期的に行うこと

 サプリメント類や薬品は肝臓で代謝される。レスベラトロールも最終的には肝臓酵素群(CYP1)によって代謝されるが、これは他の薬品類やカフェインと同じことである。

 したがって、レスベラトロールを摂取する前には主治医とよく相談して、CYP1で代謝される薬や、ビタミン、ハーブ類をとっていないか確認しておくことが大切である。

抄読会/thecrway/b.レスベラトロール.txt · 最終更新: 2011/12/02 21:03 by staff
CC Attribution-Noncommercial-Share Alike 3.0 Unported
www.chimeric.de Valid CSS Driven by DokuWiki do yourself a favour and use a real browser - get firefox!! Recent changes RSS feed Valid XHTML 1.0